先進農業探訪

先進農業事例

オランダの施設園芸事情
金子 孝也(関東ブロック)

施設園芸の企業化を目指す人にとって、先進オランダのメーカー他の業界事情を知ることもおおいに参考になるはずです(編集部)。

1.制御メーカーにアドバイザーが

日本の施設制御メーカーの一員として、オランダ出張を通じて得た情報をベースに、オランダの施設園芸事業の概要をまとめた。この中で注目すべきは、アドバイザー(コンサルタント)の存在かと思う。これが一番付加価値を生む仕事のように思える。このポジションに一番近いのが制御メーカであり、Hortimaxなどは、エネルギー管理からエネルギー供給、さらに温室建設全体のアドバイザーを目指しているようであったし、Privaも栽培指導までに手を付け出したようである。

私の関与する日本のESD(株・山武の子会社でH19年6月山武に合併)も単なる制御機器提供だけでは、総合的な温室管理、育成指導まで含めるようになれば、日本の農業の中核的存在になり得るかと思う。

●新規温室建設の場合

農家が大規模な温室建設をする場合には、温室建設のアドバイザーに相談して、投資回収の見込み、資金調達先の確保及び実際の温室建設までを総て任せるようである。訪問した温室メーカーも注文は農家ではなく,アドバイザーからもらうと説明していた。実際の温室工事及び温室内の設備に関して、アドバイザーがどこまで発言権を持ち、業者指定などを行っているかは定かではなかったが、かなりの強い力を持っているようである。ただ、アドバイザーの契約は温室建設完了までとのことで、温室が稼動後は特に関係がなくなるとのことである。投資回収にどこまで責任を負うのかは不明であった。
今回、訪問した農家は20~30億円の投資について補助金を受けることはなく、自己資金、借入金で行ったとのことであった。金融機関から10億円を超える資金を調達する必要があり、アドバイザーには、資金調達力なども必要と思われる。
また温室稼動後、どのような植物をどのような育成方法で行うかについては、植物育成に関するアドバイザーに相談しているようだ。温室内の環境設定なども、このようなアドバイザーの指示に従って、設定温度などを調節するようである。オランダでは個々の植物育成に関して標準的なレシピがあり、そのレシピをベースに指導するようだ。今回、案内してくれたベン・スタイン氏も園芸学校の先生であり、同時に農家指導も行っているとのことである。

2.温室建設アドバイザー

主な会社が5社程度あるとのことで、訪問先の農家はAgroADVISという会社と契約したとのことであった。このようなアドバイザーが存在することは、同行した日本の施設園芸業界の人も知らなかったようで、皆興味を持っていた。残念ながら詳細を聞く時間がなく、今回はその存在を確認できた程度であったが、継続して調べて行きたい。Hortimaxなどはこのポジションを狙っているようである。

3.植物育成アドバイザー

大学で園芸を教えていた人がアドバイザーとして、農家を指導する例は多々あるようであり、個人事業者を含めれば、相当数のアドバイザーが存在すると思われる。「BOGG」という会社の名前が出ていたが、詳細は不明である。日本の井関はPrivaと直接取引しているのではなく、確か代理店と契約しており、そこの人が指導に来ていると聞いている。Privaの代理店にもこのようなアドバイザーがなっているようである。

4.温室メーカー

今回、Van der Hoeven という温室メーカーを訪問した。ここは井関とも付き合いがあるようで、近代農家3社訪問のアレンジもこの会社が行ってくれたとのことであった。ここの工場では主に輸出を担当しており、60%が輸出とのこと。オランダの温室メーカーもかなり輸出に力を入れていると感じた。
同業者としては、
ダルセム Dalsem TuinbouwprojectenB.V.
クボ Kubo TuinbouwprojectenB.V.の名前が出ていた。温室メーカ-多数あるが、このあたりがオランダの主な温室メーカーのようである・・・展示会でも、それなりのスペースを取っていた。
温室メーカーは温室だけでなく、エネルギーシステム(ボイラー)、養液栽培等まで含めて品揃えをしてPRしており、単なる温室建設では付加価値が提供できないと認識しているのであろう・・・温室メーカーが自前で総て揃えてしまうというのも脅威ではある。
日本のメーカーもオランダのフェンロー式の温室を建てているが、最近はオランダメーカーに発注するのではなく、韓国や中国あたりから安い部材を輸入して、自社で組み立てていることが多くなっているようである。

5.制御メーカー

今回、Priva、Hortimax、Hoogendoornが3大メーカーであることがはっきりした。井関の方から聞いただけでなく、Privaも競合として上記2社をあげていた。展示会でも3社は温室メーカーを凌ぐスペースを取っており、派手にアピールしていた。3社とも単なる環境制御機器を扱っているのではない。養液栽培機器、エネルギー管理等含めて、幅広い品揃えを行っており、我々が競合として認識するには、差がありすぎるように感じた。日本ではESD、JOP、三基計装ともに町工場(中小企業)の域を出ていないのが実状であろう・・・これは日本の農業とオランダの農業の差とも言える。何とかしたい。
以下簡単に会社概要などを説明する。

  • Priva
     グループとしては、従業員500名を超える企業である。農業だけでなく、国内ではビル空調事業などを行っており、山武/ESDの事業領域としては近いものを感じる。Privaは代理店販売中心で直売はしておらず、展示会でもPrivaのマークを掲載している企業も目に付いた。海外での事業を早くから始めた企業であり、日本でも有名である。
     メイン商品であるインテグロは受注生産であり、在庫は持たない。現在日本で設置されているものの大半はこれである。これはオランダ本国から提供している。日本ではトミタテクノロジーが代理店となっている。今後、中型のマキシマイザーをカナダから日本市場に提供する予定であり、これは誠和が代理店になっているそうだ。
     今年の末に中国(北京)に現地法人を設立予定である(Priva Asia)。ここをアジア戦略の拠点にする。日本にもここからサポートする予定とのこと。展示会でも中国語の文字が表示された製品が展示されていた・・・中国で生産とのことであったが。
     Privaは今まで環境制御機器を提供するだけで、実際の栽培のための数値設定等は農家、アドバイザー等に頼っていたが、実際の栽培指導までできるように考えており、1名専門家をおいた。今後、この分野を強化して予定とのことであった。
  • Hortimax
     Privaを凌ぐ展示を行っていたのが、Hortimaxが所属するWest Energy Groupである。エネルギー管理だけでなく、エネルギーの供給そのものも事業に含め、また温室栽培でのトータルなアドバイザーも目指す構想である。温室建設そのものは利益が出ないため手を出さないと言っていたが、どちからと言えば温室建設アドバイザー、植物育成アドバイザーを含めて、トータルなアドバイザーを目指すようである。アジアでは、中国、韓国に重点をおくとのことで、それぞれ代理店を置いたとのことだった。日本市場は魅力がないから特に動きはなく、来年の日本展示会にも出展予定はないとの説明だった。(小川本部長によると渡辺パイプと提携したとの情報を得たとのことだが)
  • Hoogenoorn
     Hoogenoornも、エネルギー管理等も含めたトータルな管理を目指しているようであったが、複合型の育成支援のための計測装置を提供している点に注目したい。これは訪問した農家で目にしたが、照度、葉の表面温度、土壌水分/温度、葉緑素の吸収?等の測定ができる装置を一体化したもので、かなりの高額のようであった。2年間リースで7000ユーロという金額だったように記憶している。

6.カーテンその他

カーテンでは、Ludvig Svensson B.V が有名とのこと。会場のあちこちにSvenssonのカーテン生地の見本が置かれていた(それだけ扱っている代理店が多いということ)。日本の誠和は、このSvenssonのものを日本に輸入して成功したようである。誠和のものは、アクチュエータを含めてオランダ製の様子。今回、日本の小泉製麻(株)という麻袋のメーカーがPVAカーテン売り込みのために出展していたが、彼らはみづほ物産という会社の「デジコンX」というアクシュエータを採用していた。カーテンのみではなく、アクチュエータを含めて提供することで付加価値を増したいとのことだった。PVAとはプリビニールアルコールの略で、生分解性フィルムを指すようである。日本では、カネボウの関連会社であるアイオン(株)が「ベルキュウスイ」という商品名でPVAカーテンを売っている。(現・山武の職員。ESD時代の訪問記)