先進農業探訪

先進農業事例

(株)野菜工房とAAA
-埼玉県秩父市みどりが丘70番地-
関東ブロック員・小松崎・近藤まとめ

支援センター関東ブロック員の8名で2009年10月25日(日)に標記工場を視察研修した。その報告である。

1.ホテルからの注文が急増

株「植物工場」(大山敏雄社長)は2008年9月に設立され、某大手食品会社に勤務していた大山氏が早期退職後、元大手商社にいた周藤一之氏(現・副社長)が、秩父市のみどり工業団地内の旧・電子部品の空き工場を借り、2009年2月から操業を開始した。400㎡あるが、現在は3段式の平棚を使いリーフレタス、フリルアイス、サラダ菜3品の溶液噴霧栽培が行われ、年45トンの収穫目標である。実際に採算に乗せるには2~3倍の規模が必要とされている。しかし既存の建物を利用し、使えるものはすべて使い低コスト化の工夫を随所で採用し、投資額は6,000万円で、これは通常の半分だと言う。今後は蓄積したノウハフを基に、野菜工場設置・運営の指導もしていく予定である。


レタス栽培の現場(関東農政局の写真より)

従業員は9名。2009年9月2日に認定農業者を取得したが、8月から本格出荷を開始している。損益分岐点は300万円/1日だが、これは役員給与をいくらにするかによって異なってくるそうだ(社長の給与は年間300万円に抑えている)。レタスは通常値の3倍である1800円/kgが採算ラインとのこと。値段は高いが、食品工場と同様に外界と遮断した衛生管理の行き届いた環境で栽培、土壌も全く使わず、減菌を徹底した商品のため、「AAA・・・つまり洗わず、甘い、安心」が売り。甘いはエグミのなさも関係する。地元の矢尾百貨店や八木橋百貨店、大手スーパー、農園レストランなどで宣伝販売をし、取引もしてきたが今ひとつ動きが少なかった。ところがここ数ヶ月でホテルのシェフがAAAの価値に注目し注文してくる例がめっきり増え、目下は品切れ状態が続き販売は軌道に乗り始めている。

2.露地栽培の3~4倍の速さ

レタスは35日で育つ。これは露地栽培の3~4倍の速さ。1日1000株の生産能力がある。いま流行のLED(発光ダイオードの照明)は設備投資がかかるため、通常の蛍光灯を使い、必要度を考え蛍光灯を増設してきた。LEDが安く供給されるようになれば、使用したいと言う。LED赤を使用すると植物内に抗菌物質が作られ、ハーベストフリー(収穫後に農薬を使用しない)も可能になるからだ。室内温度は20~24℃、湿度60%、炭酸濃度1000ppm。これにより菌の抑制を行っている。湿度が80~90%が植物に良いと言われているが、菌が増殖してしまうので湿度は抑制。細菌数は1ml当たり200~300個と極端に少ない。

苗は3回ほど植え替えるが,そのたびに微酸性電解質水で消毒している。次亜塩素酸ソーダでは葉がだめになるが、電解水は無害で湿度が低くいため蒸発してしまう。冷気は直接当てるのでなく、ダクトを設置しそこを通じて均一に降るよう工夫。
当工場の製品は、低硝酸で「えぐみ」が少ない。育成まで4液を使い分け、最後に水にカルシウムを加えたもののみ噴霧で与えることにより低硝酸になる。またカルシウムは葉のなかにプリン体を形成し、葉の縁が小さくちじれる症状(チップバーン)を防ぐそうだ。LEDの水耕栽培が成功しないのは「えぐみ」が抜けず、付加価値がつけられない商品になるためである。なおトマトは実もつけなければならないため、コスト的に合わないので考えていない。
水耕のように常時溶液に晒すのではなく、噴霧によりストレスを与えることで毛根が良く伸びる。これにより植物ホルモンのサイトカイニン(老化抑制)が多く生成され,適切な温度管理であれば3週間ほど日持ちがする。将来は、付加価値をさらに高めてアンチエイジング(老化防止)食品として売れる可能性もある。収穫にあたってハサミで行うと細胞が壊れ痛みがひどいため、ナイフで水平にきり取ることが必要と言う。糖度はリーフレタスを丸ごとつぶせば3度。通常は2.5度とのこと。
いずれにしても3Kが排除され、働き易い環境であり、「女性やお年寄り、障害者など働くことができれば、雇用の拡大にもなる」と大山社長は語っている。問題は高いコストであり、これに見合う高価格・高付加価値を受け入れる販路の確保が、当面必要なことを教えてくれる。

秩父市の株式会社「野菜工房」(大山敏雄社長)は、平成21年2月からリーフレタス、フリルアイス、サラダ菜の水耕栽培(植物工場)を始め、21年4月から出荷を開始した。

同社は、元大手食品メーカーで水耕栽培の研究をしていた大山社長と元大手商社員の周藤副社長が中心となって、「洗わず、甘くて美味しい、安心野菜を提供し、高齢者や障害者の働く場をつくり、地域の活性化に役立てば」と設立したものである。

同氏は、遊休工場の一部を借り、そこに栽培環境を制御した多段噴霧式水耕栽培システムを導入し、室内を外部から遮断することにより無農薬・低細菌とし、さらに、栄養分を必要な時に必要なだけ霧状にして与えることにより、低硝酸なエグミの少ない甘くて美味しい野菜の生産を実現した。

植物工場の面積は430m2で、これを有効に使うため3段式の平棚を採用し、は種してから35日~40日で収穫できる。現在は、近隣のスーパー、百貨店、ホテル及びレストラン等を中心に出荷しており、年間45tを目指している。

同氏は、「設備や栽培方法について最先端のものと自負しており、今後、販売経路を検討し、規模を拡大していきたい」としている。


遊休工場を利用した植物工場内

サラダ菜のパッケージ